【中野人】ミニ小説「北大ホームズ」4話

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新コーナー「宮園オート坪井」のミニ小説「北大ホームズ」第4話、ぜひご愛読下さい。

 

☆ミニ小説「北大ホームズ」

 

【4話】

 

「お前、レポートはどうしたんだよ?」

その問いに、宮田は曖昧な返事を繰り返した。

結局どうにかなったとか。レポートがあったこと自体が勘違いだったとか。でもそんなはずはないのだ。宮田の履修していた授業は僕もほとんど受けていたし、中にはレポートの提出が単位取得の絶対条件である授業も確実に存在したからだ。

あの偽死体が見つかった日、宮田は大量のレポートに喘いでいた。提出期限まであと一時間を切ったレポートもあったはずである。

しかもその直後に例の死体騒ぎが発生して、宮田はとてもレポートどころではなかったはずだ。

警察からの聴取はあったし、すぐにやって来た新聞記者からの取材も受けた。挙句には大学の職員からも事情を聞かれ、その全てが終わった頃には、レポートの提出期限はとっくに過ぎていた。

本来なら、宮田はレポートの未提出――すなわち今年度の留年が決定して、途方に暮れているはずなのだ。

しかし当の宮田は、コタツの中で呑気にゲームに興じていた。

学費を払っている親に電話で泣いて許しを請うでもなく、担当教員に単位認定の懇願をしているわけでもない。

半ばヤケクソになって現実逃避しているのかとも思ったが、どうも様子には見えない。それこそレポートの問題が全て解決して、ホッと胸を撫で下ろしているようにすら見える。


僕はどうにも腑に落ちなかった。

宮田は何故呑気にゲームなどに興じているのか。

そもそも警察が来た直後に、新聞記者や大学職員までやって来たことが疑問だった。

普通、殺人現場に記者が来るのは通報からしばらく経ってからだろうし、大学の職員までやって来るのはあまりに不自然である。

それこそ、偽の殺人犯が自ら新聞社や大学に連絡でもしなければ、そんなことは起こらない。

それに偽の殺人事件など起こして、いったい誰に何の得があるのか。

僕にはそれがまったくわからなかった。わからなかったのだけれど、

「宮田……お前まさか」

ふと脳裏をよぎった仮説に、僕は背筋を凍らせたのだった。

 

※次号へ続く

 

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